STORY―翁とかぐや姫の誕生物語―

「じゃあ、私らが作りましょう! 竹チップ入りの有機堆肥を」。

 

株式会社リビングファーム広島は、2020年4月に広島県安芸高田市の美土里町土づくりセンターの管理者指定を受け、竹の有機堆肥「竹取物語シリーズ<翁><かぐや姫>」の生産をスタートしました。

 

なぜ私たちが堆肥センターの運営を引き受け、どのように「竹取物語」が生まれたのか。翁とかぐや姫の誕生秘話をご紹介します。

厄介者の竹が農産物を育む資源に

竹は土中にある地下茎から毎年タケノコを生やし、勢いよく増えていくことから、現在の農村では厄介者扱いされています。安芸高田市でももちろん同じです。

 

一方で竹林を掘ると、時おり「はんぺん」と呼ばれる白い菌類のかたまりが見つかります。見た目が食べ物のはんぺんに似ていることからついた呼び名で、竹には土着菌を増やし発酵を促す働きがあることも古くから知られてきました。

 

ある時、竹粉を堆肥(たいひ:動植物由来の材料を混ぜて発酵させた堆肥)に混ぜたところ、土壌改善(保水性と水はけの向上)や農作物のおいしさアップに繋がったことがニュース等で大きく報道されました。

 

「これは、うちの町でもできるんじゃあないか?」。

 

のちに堆肥センターの運営に関わることとなるメンバーの多くは、この報道を見て心を躍らせました。

野山も田畑も守りたい

弊社代表取締役社長の山本昭利は、11年ほど前に安芸高田市に移住・就農しました。有機野菜を中心とした販売会社「合同会社まめの木」の代表でもあります。

有機栽培は「安心安全」というイメージが先行しがちですが、有機栽培で微生物の力を借りて育った野菜は、丈夫においしく育ちます。「味が濃い」と表現されることも。

 

「竹チップを使った堆肥で食味が向上すれば、差別化になる。原料の竹を確保するために里山の手入れが進めば、シカやイノシシなどの潜む場所が減り、鳥獣害の軽減にも繋がるはず」。そう考えた山本は、市の保有する堆肥センターで竹チップを使った堆肥を生産してほしいと要望を出しました。ところが当時の堆肥センター指定管理者は規模が大きく、柔軟に運営体制を変更することが出来ません。

 

何度も交渉を重ね竹チップ入り堆肥の製品化について模索した結果、市と前指定業者から「次の堆肥センター指定管理者になり、自分たちで生産してはどうか」という提案を受けます。こうして弊社が2020年4月からの美土里町土づくりセンターの指定管理者に決まりました。

森林や竹林に支えられた高品質堆肥

私たちの製品にはおがくずや竹チップが欠かせません。そこで、林業のプロである矢木仁が専務取締役に就任。矢木の指導のもと、林業従事者や土づくりセンターのスタッフが山や竹林の手入れをしています。

作業で出た木材や竹材はその場で砕いてチップにし、センターへ持ち込みます。竹チップ入り堆肥の生産が始まり、すっきりと見通しの良い竹林が少しずつ増えてきました。

 

堆肥はおがくずと牛糞、竹チップを適正な割合で丁寧に混ぜ合わせ、発酵させて作ります。

 

当サイトでは竹の含有量3%の堆肥を<翁>、20%の堆肥を<かぐや姫>として販売しています。特に<かぐや姫>は約半年かけて何度も混ぜながらしっかり発酵させるため、たくさんは生産できません。手間暇かけて管理した堆肥は「フカフカで完熟しており、質が高い」と1年目からご好評いただいてきました。

コメも野菜も花も元気に

弊社の「竹取物語」は、コメにも野菜にも花にもお使いいただけます。「この畑、ちょっと水はけが悪いな」「今朝水をあげたのに、もう乾いてる」といった畑があれば、ぜひ撒いてみてください。フカフカのベッドのような畑で、どの作物もきっとすくすくと生長してくれるはずです。
※野菜の写真はイメージです。